
夜明けまでもう少し。でも、いつもここで目が覚めて、もう眠れない。なんだかんだ言って、眠れないというのがとても怖い。これは33歳を過ぎた頃から。以前は夜が好きで、眠りたくないといつも思っていた。目を閉じてから、きっといろいろなことが起きているんだろうなぁと思って、できるだけ起きていて、いろんな夜を見ていたいと思っていた。でも、いざ眠れないとなると、とても眠りたくなった。なんでだろう。起きているのと眠っているの、どっちがいいのだろう。夜はとても大きくて、広くて、どこまでも続いている。そして、呆気なく朝に変わってしまう。なんか知らないけど疲れていて。だから、休みたい、果てしなく眠りたいといつも思っている。だけど、起きてしまう。そこからはどうしてこんなに長いのだろう。いろんな恋が、いろんな出会いが、いろんな女性がぼくの上を通り過ぎていった。そんなことを半分起きた脳みそが考えたりする。そのどれもが、どうしようもなくて、どうにもならなかった。受け入れているのか、忘れようとしているのか。カーテンの向こうでは、歩いている人がいる。帰り路なのか、それとももう一日がはじまっているのか。ぼくも以前はあんな感じで、歩いていた。この夜明けまでもう少しの時間を。あれは帰り路だったのだろうか。それとも、逃げ出してきたのだろうか。とにかく、夜は近くて、おかしくて、だらしなかった。朝になって、コーヒーに手が届くと安心する。もう眠らなくて、いいから。もう思い出さなくて、いいから。もう夢を見なくて、いいから。犬にごはんをあげて、始める。よーい、スタート。たくさんの憂鬱な言葉が世界中を駆け巡る。それよりも早く、洗濯して、掃除して、公園に行こう。削除しなくてはいけないものが多すぎる。ほんとは違うんだけどなぁ。あさごはん、ひるごはん。友だちとの会話。それぞれがそれぞれの終りに向う。認める、認められる。働くってなんのことだろう。あいさつをたくさん集めて、立ち止まる。新しいお店。古いお店。なくなった場面。もう戻れない話。続きは唐突に始まって、途中でまた別の展開を探してしまう。新しいシャツ。時計。おなじ味のコーヒー。銀行はいつも、ぼくにとって不安な場所でしかない。どのビルに行くにも、ここから曲がることになる。夕暮れ。女の子たち。ハイになるか、それとも落ちるか。いらない会話。でも好き。簡単な言葉こそが、いつも手作りさ。でも、知らないことがやっぱりたくさんある。会話の下にも言葉。おなじリズムが好きで、でも、それは眠れなくなるまで、わからなかった。むしろ、以前はおなじような毎日が嫌だったし、そうなることを必死に拒んでいた。(ような気がする)(それはほんとうに、気がするだけだろう。結局、いつもおなじところにいるのだから)それは、大切なことだと今は思う。どうしようもなかった!どうにもならなかった!だけど、なんとかなると思っていた!アホか!ならない。なれない。忘れたよ。忘れようよ。よるごはん。今日もどこかの場面で卵を食べたような気がする。スィッチ、オン。どこかで、夜がはじまる。どこかで雨がはじまる。ジェシカが帰ってくる。夜がこことそこにある。当たり前に暮らしている。当たり前に疲れている。ビューティフル!当たり前にここにいる。ファック!もうすぐ!もうすぐだよ!そして、もうすぐ、あの時間がやってくる。ぼくの起きる時間が。夜明けまで少しなんだけど、長い、あの時間がやってくる。




